『やがて君になる2巻』好きという言葉が残酷に切なさを募らせる。

百合漫画

やがて君になる2巻が発売されました。
一言で言うと先が読めない漫画って感じですね。
だから気になる。
見守りたい、この物語。

1巻についてはこちら。

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やが君は登場人物ほぼ全員が面倒くさい性格してる。
絡み合う複雑な心理、そこから生まれる人間関係。
この先どう転がっていくのか、引き出しの少ない脳では想像ができません。

しかしながら、面倒くさそうな登場人物ばかりと言っても
読みにくい事は無く、仲谷鳰シェフによって調理された作品は
しっとりとしていて、それでいてしつこくなく
クリーミーな優しい甘さに仕上がっています。

この複雑なはずなのに食べやすいというのが
やがて君になるの特徴の一つと言えましょう。

客席の傍観者

侑と燈子のキスを目撃してしまった槙という百合に害のない男子。
不思議と女子の恋愛相談役になる事が多いという彼。
それが高じてか、人の恋愛を見守るのが趣味になっているという
なかなかに拗らせた性格の持ち主。僕は客席にいて舞台を見ていたい彼が恋愛相談を受けているのも客席に座るためです。
それなのに舞台上の相談者が客席の観客に恋をしようものなら
内心で席を立つほど興醒めする彼。

恋を知らない自分に悩み、暗中模索している侑と違って
自分の世界に恋を必要としていない槙。
彼は第三者視点こそ至高、観客は舞台に上がる必要は無いと
見守り百合厨としては共感しまくりな感性を持っています。

秘密の演目、大事に見守らなきゃそんな槙が見つけた新しい恋の物語は百合。

生徒会でもスポーツでも自分が活躍するより
活躍する人をサポートする方が性に合っているという彼。

正直、人の恋を舞台に見立ててる拗らせた男子にしか見えないが
必ずや百合のサポートをしてくれる事だろう。
侑も燈子も槙を好きになるなんて100%無いだろうから、槙も我々も安心だね。

変わりたい、好きになりたい…そう思っている侑

侑は優しい子です。
槙にキスを見られていた事を知った時にも
思い浮かんだのは自らの保身ではなく、真っ先に先輩の心配をしました。

もし広まったら…先輩が努力して今の像を作り上げている事を知っている侑。
彼女の周囲から受ける評価に影響を与える事を恐れます。

槙「小糸さんもちゃんと七海先輩のこと好きなんだね」
観客にはちゃんと侑も先輩を好きで特別に思っているように見えます。

一緒にいたい、好きになりたい先輩は好きを伝えてくれるのに、変われない自分は嫌だと思っている侑。
侑は先輩と一緒にいたい、好きになりたいと
自分の心の変化を望む前向きな気持ちを持ち始めています。
しかし…

だから私なんでしょ?侑は先輩がどんな人間を求めているか察してしまいます。
弱い自分も完璧な自分も肯定しないけど一緒にいてくれる人。
だから自分なんだと。

先輩のこと好きにならないよ完璧な先輩も弱い先輩も、どちらも好きにならない。
これからも、これまでも好きにならない。
変わりたいと思っているのに変わらない事を選ぶ。
それが先輩と一緒にいる為に侑が選んだ答えでした。

好きになりたいと思っているのに、好きにならないと言わないといけない。
下唇を噛みしめる思いだろうに…切ない。

燈子の親友、佐伯沙弥香。

侑と出会うまでは、誰とも付き合う気がなかった燈子。
親友の沙弥香はそれでいい。そのままでいてほしいと願っていた。
そのままでいてくれる間は、私が一番そばにいられるから。と

しか~し、燈子にはお気に入りの後輩が出来てしまう。
会長選挙の応援演説の役目すら後輩に取られるほどに。あなたが心配しなくても大丈夫よ私がついてるもの

沙弥香は面白くないからといって後輩を虐めたりはしませんが
燈子には私がついてるから、あなたが心配しなくても良いと
自分が燈子を支えたいという気持ちは負けたくないようです。

もし、燈子が沙弥香に弱さを見せることができていたら
また違った物語があったかもしれない…
と思ったけど、逆に親友だから弱さは見せられなかったのかもなぁ。
親友でも何でも無い侑だからこそ、燈子は素の自分をさらけ出せたかもしれないし。

沙弥香の今後の絡みにも期待。
彼女もちょっと拗らせてる面倒な感じあるある。

自分を肯定せずに一緒にいてくれる人

七海燈子は周囲から好かれる優秀だった姉を亡くしている。
”お姉ちゃんの分も”そう生きるように周囲から声を掛けられた幼き燈子は
お姉ちゃんのようになることを目標として成長し
姉のように振る舞うことで、たくさんの好意を向けられるようになった。

好きは束縛する言葉自分に向けられる「好き」は、姉のように振る舞っている自分に向けられるもの。
なら姉のように振る舞わなくなったら好きじゃなくなるということ。
そう燈子は考えているようです。

好きを持たない君が世界で一番優しく見えた「好き」は束縛する言葉だと思っている先輩にとって
「好き」を持たない侑が世界で一番優しく見えた。
だから侑を好きになった。なんという運命。

どうか私を好きにならないで好きは束縛する言葉。そう考えると燈子が侑に向ける好きは
好きを持たない世界で一番優しい人でいて欲しいということ。
だから私を好きにならないで欲しいという意味を持った好き。

つらい。
特別を知らない事に苦悩し
好きになりたいと思っている侑には残酷すぎる。

「甘いもの知らずは辛いもの知らず」

仮に砂糖しか食べたことがない生物がいたとしたら
砂糖は甘いという考えを持たないでしょう。
なぜなら砂糖と比較するべき味を知らないから。
辛い唐辛子や苦いゴーヤなど比較できる味を知って初めて砂糖の甘さを知る。

それと同じように、「好き」を知らなければ
比較する「嫌い」も知らないという感じにもなってきて
世界で一番優しい人って認識になるかもしれない。

好きの反対は無関心って言葉も聞きますけど、無関心の反対を好きとは絶対言わない。
あくまで関心が有るかどうかになり、その関心が好意か嫌悪かわからない。
だから好きというコインの裏側は嫌いであり、好きと嫌いは表裏一体。
そのコインに注目する人は好きか嫌いかに関心があるし
コインに注目しない人は、コインの裏が出るか表が出るかどうでもいい無関心。それだけ

「好き」を知らない世界で一番優しい侑が
もしもコイントスで「好き」を出してしまったとしたら
侑が変わる事を望んでいない先輩は、侑を好きじゃなくなるのだろうか…?

どうなるかそれはわからない。
けれども事実「好き」という言葉で侑を束縛する先輩。
好きを知らない貴女だから好き。
だから私を好きにならないで欲しい。
それが先輩の望んでいることであり、侑はそれを汲み取った。
変わりたがってる侑に変わらないことを望む先輩。

これからも、これまでも好きにならないと侑に言わせてしまった先輩が
ある意味で一番、この作品で性格拗らせてるタチの悪い人かもしれない。私といて他の人を好きにならないで、私の事を嫌いにならないで自分は好きだと伝えるクセに、相手には好きになって欲しくない。
でも他の人を好きにならないで欲しいし、自分を嫌いにならないで欲しい。
なのにキスしたいと迫ったり、心音聞いてみるって誘ったり
先輩…見方によっては、とんでもない小悪魔だよ。

こう見ると「好き」を知りたいと苦悩してる侑が
お人好しすぎるだけで一番普通の性格に思えてきます(何

こうして複雑な心理が絡み合う話は最高ですね。
まったくもってどうなるか読めない。とりあえず
好きにならないと宣言した侑が、言葉とは裏腹にどんどん先輩を好きになっていき
好きを知らない苦悩から、好きを知る苦悩を味わうまで想像しました。

好きを伝えられない侑が、その苦しさで涙する時がくる…そう受信した。
それでも先輩は侑を「好き」で束縛するのだろうか?
それとも「好き」の呪縛から逃れ、侑を受け入れる事ができるのでしょうか?

この演目が実際にどうなるか我々にはわからない。
ただ、槙くんと一緒に特等席で舞台を見守る所存です。

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1巻についてはこちら。

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